先日の書込みで、もう少し考えると書きました。ゆっくり考えて整理している中もあの場面を思い出します。覚えている範囲なので、前後関係に誤りがあるかもしれませんが、書いてみました。
人魚姫・ハンブルグ・バレエ
-- ※※ 第1部 ※※ --
第1場/プロローグ:船上
【登場人物: 詩人、ヘンリエッテ、エドヴァート、結婚式の招待客】
解説:詩人はヘンリエッテ、エドヴァートとの結婚式を思い出している
一筋の涙が思い出と幻想の海へ流れる
*楽曲の無いまま幕がせり上がり、舞台空間の中に浮かび上がる船上の絵画的な切り抜き、日本の借景を思わせる
海の喫水線はブルーのネオンパイプが使われており、一目見て理解は可能かと思われた
アウトラインが暗闇でよりくっきりと浮かび上がり、結婚の招待客が高らかな笑い声と楽しい会話で結婚式が盛り上がる。
詩人はヘンリエッテ、エドヴァートの結婚式の思い出で、王子の握手に暫く気が付かないが、正気を取り戻した詩人が、
握手と一緒に流した涙は、詩人を一気に海底へと誘う。(詩人が転げ落ちて行く様は、とても印象的)
花嫁は友人たちへブーケを投げ出したり、と・・ 幸せな物語と、詩人の切なさの対比が見事である
第2場/海底
【登場人物: 詩人、人魚姫、ヘンリエッテ、エドヴァート】
解説:海底で エドヴァートへの憧れが、人魚姫の姿に変わる。
*海達が静かに、でも俊敏な動きで海中物質を体現する。また姉妹達の登場と、意外と忙しい海底であるが、フォルムは
ブルーに統一されたシンプルなダンスだけの世界感。人魚姫は自由に舞い、また日本風に言うと3人の黒子が人魚姫の
サポートとして視界を縦横に広げさせてくれる。人魚姫は体重を一切感じさせずに、(多分、スキューバの経験がある方で
あれば直ぐにあの動きが”分る”って感じさせてくれるように)自由に上下左右に移動している。でも船上で行われている
結婚式に興味津々で、地上の世界への憧れが人魚姫のひとみから、想像出来てしまいます(楽しい時間は直ぐに過ぎ
ます)。エドヴァートは、後に登場する王子にもちろん、とてもよく似ており、愛する同性のエドヴァートとその妻ヘンリエッテ
と詩人の3角関係は、なにげに後にくる物語を興味深く引き込んで行きます。
人魚姫は目の覚めるようなパールなライトブルーの尾ひれを輝かせて、人形を黒子が自在に操っているかの様に屈託の
無い憧れに胸を躍らせている所等、随所に非凡な才能を覗かせてました。また海の女性達は舞台ラインと完全な水平で
静かに移動する姿が、海水に吸収された最後の色(ダークブルー)に浮かび上がり何とも言えない美しさを出している
第3場/船内
【登場人物: 詩人、王子】
解説:海軍士官が訓練中。王子はゴルフに夢中になり、ボールが海に落ちた事で、自分も海中へ潜り始める・・・
*ここから一気に物語に引き込まれる。でもゴルフは少し苦手の様ですが、勘弁してあげよう♪
若い士官達の勇壮なダンスと、少々コケテッシュなダンスを交えながら少し男前な訓練風景が続き、王子がいよいよ登場
彼は水着の上に白の「愛と青春の日々」を思わせる士官の制服をカジュアルに着こなし、ゴルフの興じている。
クルーザでの私的な訓練と言う感じもしたが、たぶん軍での風景かな・・?とも判別不明~~;;
ボールと共に海中へダイブ・・・・♪
第4場/海の中
【登場人物: 詩人、人魚姫、王子、海】
*この章があまりよく理解出来ていませんでしたが、とにかく次にくる嵐の前にエドヴァート似の王子が海中でボールを
探しているシーンです。
第5場/嵐
【登場人物: 詩人、人魚姫、王子、海の魔法使い、海軍士官、水兵、魔法の影、海】
解説:海中に飛び込んだ王子を溺れさせるようと、海の魔法使いが嵐を巻き起こす
*ここで私の感性では理解出来ないか、あくまで想像の域を出ない拙い意見⇒ エドヴァート自身である人魚姫の解説があるが
詩人とエドヴァートの愛の形を、”助ける”という糸口から”永遠”へと広げた結果としての物語を始めた。
海中での古典バレエ的なパ・ド・ドゥと言う枠には多分入り切らないであろう”愛の形”が口づけと言う引き金で、王子を助け、
エドヴァートへの憧れを詩人は欲する。
第6場/嵐が過ぎ去った後の静けさ
【登場人物: 詩人、王子、人魚姫、海】
解説:
*この章があまりよく理解出来ていませんでしたが、次と被る印象。
人魚姫は王子を死なせたく無いばかりに、必至の形相と愛を以て懸命に、人間でいう人工呼吸(手を胸に宛がい、1,2,3って
言う行為)・・念と言ったほうが嵌るかもしれませんね・・で生還させてしまう。もちろん詩人の意志がある事は言うまでもない
第7場/浜・教会の近く
【登場人物: 王子、王女、詩人、人魚姫】
解説:浜辺の修道院学校の女生徒の一団の中で、ヘンリエッテによく似た王女が、砂浜に打ち上がった王子を目覚めさせる
王子は王女が助けてくれたのだと、信じてしまう(とっても美しい王女に恋してしまったかも)
*無事に王子は生還する。人魚姫は王子の生を確かめ(王子の胸に手を掲げ、何度も何度も確認する)を砂浜の影で見守り
ます。そこへ王女が気を失っている王子に気づくものの、修学中の王女は終わるのをじっと待つます。 ニキアが大僧正の目を
盗む様に、先生が去ってから現れ、タイミングよく王子の目覚めと王女の印象を植え付けてしまいます。(ちがうってば・・・♪)
少し遠くで人魚姫は、安心と嫉妬とのも欲しさを以て海に帰るも、どうしても気になり、 修道院学校のグレーで襟に白を配した
着衣を手に入れます。 でも安直な王子はこの命の恩人である美しい王女に対して恋してしまいます。
それを目撃してしまう、人魚姫はここで固く決断したのでしょう。
第8場/海底
【登場人物: 詩人、人魚姫】
解説:王子と王女の間に愛が芽生えた事を目の当たりにし意気消沈、人魚姫の王子への思いは絶望感に変わり、詩人の魂が
そこに反映されている。
*詩人も人魚姫の目的意識下で合致しており、新しい洋服を新調するときの弾んだ気持ち。体に合わせてみたりと一瞬とても楽
しそうですが、心の中では下した決断への不安で胸が一杯、本当に最初の笑顔が全くと言っていいほど無く、強さまでもが切
なくさせるエレメントとなっていきます。この場面はとても私、心に残っています。
この洋服は王子の心と共にある筈で、これを纏った私を受け入れてくれる筈と言う断ち切れない思いがとても悲しく
きっと思い出してくれる筈。祈りにもに似た人魚姫の肢体は本当に切なく舞っていました。書いている今でも涙が滲みます。
第9場/変身
【登場人物: 詩人、人魚姫、海の魔法使い、魔法の影】
解説:人間になることを心に決めて人魚姫は海の魔法使いの所へ向かい、「人間の身体にして欲しい--どんな犠牲があろうと」と。
海の魔法使いは荒々しく人魚姫の姿を変える。
*海の魔法使い、魔法の影たちの躍動が一気に舞台を熱くした。裏返せば、人魚姫の決断の凄さ。演技の極み。
この舞台で唯一、眼を背けたくなるほど、悪く言えば暴力的な、どんな犠牲があってもと言う決心がこれ程の振付に対しての
意味であるなら、涙なんて流している場合では無く、しっかりとこのシーンを刻む必要性がある様に・・この打ち勝てる強さこそ
詩人の思いであるし、エドヴァートに対する思いであった気がする(見ている時は余りにも胸が痛み、犯罪行為以上の振付とま
で感じていました)。先に書いた「人魚姫は目の覚めるようなパールなライトブルーの尾ひれを輝かせて」は無残にも、身体を、
転がる度に、剝がれて行き、魔法の影は人魚姫を裸体にしてしまう。ライトブルーの尾ひれは海の魔法使いの物となり、
あろうことか、海の魔法使いは自分の一部としてしまうが、人魚姫はもうそんなことには目もくれずに、海中で体重を感じない
一瞬、自分に足が・・王子と同じ姿に・・王女にも・・と言う淡い喜びを出す。投げ出した足を引きよせ、「これで王子と・・」っと
言う声が聞こえんばかりに・・。 一方詩人は、グレーの王女が着ていた制服を持ち、宛がうもののともて悲しい対比です。
第10場/浜
【登場人物: 詩人、人魚姫、王子】
解説:一糸纏わぬ姿で、人魚姫は浜辺で目覚めます。初めて自身の足で一歩を踏む出すものの、耐えがたい痛みを感じる
*人魚姫の決意が試されている様に感じます。苦痛でした。本当に観ていてこんなに(後の事も知らずに・・)胸が苦しい事は
初めてです。立ち上がって”つま先”がついた瞬間から苦痛に体が歪み、次の一歩で膝を内側に向けて・・こんなにもまっすぐな
気持ち。 懸命に人間への、王子への思いをリハビリの苦しさと引き換えます。
詩人はこの人魚姫を第3者的に見つめ続け、どうしようもない苦しみを過去の恋愛にもがく気持ちとダブらせている様にさえ観
えます。私の稚拙な感性ではこの人魚姫の演技の深さを説明出来ませんでした、心で感じるのは悲哀などでは勿論なく、
人間の足と人間の心を持った、詩人の創造と、人魚姫の美しい部分が重なった結果と映ります。
裸でさえも、この人魚姫の心の美しさが伺えます。
第11場/船内
【登場人物: 詩人、人魚姫、王子、王女、魔法の影、海軍士官】
解説:この奇妙な少女を、王子は可哀そうに思い、船へ連れて行く
*奇妙な少女・人魚姫を、少し興味深げに眺めていますが、白の上着を人魚姫に着せて、自身の船上へ招きます。
船上には、王女の姿も・・・、助けて以来すっかり勘違い王子は、王女をますます愛してしまいます。単純な成り行きと
その結果もちろん、王子は疑うことを無く、また人魚姫の事は別世界に置き去り、王女との愛を深めます。
王女にしても王子にしても、偶然の出会いは奇跡と感じたに違いありません。でも少しだけ視野を広げると、そこには
王子の為に、尾鰭を捨ててまで決心した1人の女性が存在します。 彼女からの側面と、王子・王女からの側面では、もちろん
全く逆説的な世界があります。「運命」なのでしょう。
人魚姫は海軍士官と消え去った時は、彼女の身の危険さえ感じさせる演出。 怖かったですが、次の瞬間、セーラ服を纏って
士官たちの輪の中で、苦しそうな表情・・でもすぐそこには、愛する王子がいる。この永遠に続く様な対比の妙が怖い。
とうとう車椅子に座ってしまった人魚姫は、王子の腕に縋る為、手をいっぱいに延ばすが、するりを王子はかわし王女を去っていく。
楽曲はピークを迎えていた気がします。素晴らしい、涙さえ明るくなってからしか流す事に出来ない、1幕の終了でした。
・・・この時点で、疲労感が・・・またこの続きがどうなるか考えるだけで、立ち上がることが億劫になりました。
(75分間という、経験の無い時間でした)
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テルミン選択について
このおとを出している楽器を初めてなのでオーケストラピットまで見に行きました
思ってたより小さい機械です。木箱自体は40cm四方程度で、足が付き、金色のアンテナは水平に1本、垂直に1本です。
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【アウエルバッハ:】最初は、男性歌手を宛がう案も有ったのだが、現実血気盛んな印象になることを避け結果の様です。
世界中の童話で、人魚姫は船や船乗りを不幸に陥れます。それは男性達が、人魚の歌を耳にすると聞き入って時間が止まり、
我を忘れてその妖しい声の虜になり死んでしまう。ポイントは属性。人魚姫同様に、テルミンもオーケストラでの属性が不明とい
う合致点の様です。
-- ※※ 第2部 ※※ --
第12場/人魚姫の部屋
【登場人物: 人魚姫】
解説:地上の空間で、閉所恐怖症に苦しむ。努力しても人間の身体はいつまでたってもぎこちなく、不格好である。
*人魚姫が1人の人間になって、不自由と絶望感に苛む姿を体現します。縦横いっぱいに伸ばせない程度の空中に浮かぶ部屋。
たった1つの椅子と、奥行きを感じさせる四角い箱の中で人魚姫は悶え、苦しみます。この部屋は閉所の永遠を創造したのかも
しれません。手の表情、歪む顔、方向感を失うくらい曲った腕、全身を支える脚、またその指先まで、苦しみより悲しみのオーラの
様に観えてしまいました。もちろんこの前は休憩がはいったのもの、直ぐに集中しています。このシーンだけは早く終わってほしい
と思いました。この間少しだと思うのですが、眼を背けてしまいました。(その間、1幕が頭の中で過っていました)短い時間と思い
ますが・・。 このシーンから、うっすらと涙が最後まで止まりませんでした。決して愛が無いとは言いませんが、人魚姫の原作をし
らない私にとって、運命に翻弄されるこの台本の肝がこの場面なのかな・・なんて想像してしまいました。
これを童話と言うなら、童話の概念を変えざろうえません。
楽しそうな楽曲につられ、結婚式の招待客が登場します。ここからは詩人の創造物では無く、人魚姫そのものが主題です。
*【ノイマイヤーインタビューから:】バレエが挑戦する身体的プロセス・・と位置付けた場面 らしいです。
第13場/王子の宮殿・結婚式
【登場人物: 詩人、人魚姫、王子、王女、海の魔法使い、魔法の影、海軍士官、人魚姫の姉妹、海】
解説:今日は王子と王女の結婚式が執り行われる。しかも人魚姫は介添えを務める事に・・・
結婚式の最中に海の魔法使いが現れ、人魚姫を試す・・「王子の命を奪ったら、尾鰭を元通りにして海深く棲家に返す」と・・
でも、どんな事が有っても、殺す事など出来ない事は確か。王子の行動は・・
*前に一度布石があります。王子は人魚姫にキスする真似をして、手で払いのけ「っんな・・ないよね」って感じで置き去ります。
人魚姫は、海の魔法使いから大きい切っ先のナイフを渡されます。でもこの現実、結婚して思いが遂げれない運命を一瞬後悔し、
王子に向かいますが、彼の姿を見た瞬間諦めます。愛しているのは確かだし、思ってもらえない事も現実。
既に決心した決意と、あと数%の望みにかけて、王子に愛を確かめます。人魚姫は確かに王子を助けているのに・・。
介添え人の衣装をつけた人魚姫は他の女性達より、極端に小さく、また不格好なおんなです。でもベールをもった手は、妄想の中で
「私」を想像し、幸せを望み、王子にいつの間にか近づくものの、介添え人の女性の静止させられ、列に戻されます。この間も多分
不格好な(内又)あしをべたで歩き、素敵な赤の衣装が悲壮感を見事に描いています。
王子に近づき、あの時の人魚姫である事、判ってもらったと一舜(私が)思った時の、人魚姫の嬉しそうな顔は忘れられません。
でも人魚姫は絶望感に追い込まれてしまいました。 それも舜殺。 あの「っんな・・ないよね」って感じで置き去ります。
それも王女と一緒に。
人魚姫は元の姿、裸身に戻ります(絶望感の意味を裸身を以て表現しているのかもしれません。もともとグレーの制服は人魚姫の
人間に変身する意味だと思うのです)
永遠の苦しみを決心した人魚姫はここで終了します
第14場/エピローグ 別の世界
【登場人物: 詩人、詩人の創造物】
詩人は創造物である人魚姫にエドヴァートとして、永遠の命、宇宙(死の世界)へと旅立ちます
私達はここで拍手をするのですが、暫くは息をしてたように思います。(酸欠状態かも?)
この文章を書く為に思い出すごとに、涙がうっすらと浮かびます
好き嫌いの激しい演目かもしれません。また暴力的な怖いシーン、不愉快なシーンもあったと思います。
生まれ育った環境で観る人の感想が変わると最初に書いたのは、愛の存在です。多分。耐えがたい苦しい体験を長期間した人にとっての、この
物語は「ブラボー」に値するし、忘れすことの出来ない奇跡の様に感じるのではないでしょうか
ノイマイヤーはインタビューの中でこの創造は難しくないと言い切っています
彼の生い立ちが気になります
少し長くなりましたが、とてつもない舞台を見せて頂けた事に感謝します
詩人:イヴァン・ウルハンの威厳、人魚姫/詩人の創造物:シルビア・アッツォーニの女優としての表現。
ハンブルグ・バレエ用に細かく修正しているようですが、完成度の高い、奇跡を起こしてくれたシルビアに感謝します
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