2009年5月16日土曜日

5/17 『マノン』・『椿姫』やっとみました

 本当に久しぶりに時間が空いたこともありたまっていた、NHK芸術劇場で放映した英国ロイヤルの「マノン(manon)」、NHK-BShiのパり・オペラ座の「椿姫(Die Kamiliendame)」を見ました。 




 








   
 
- - キャスティングは割愛させて頂きます(すみません) - -
  
  
 ロホのマノン考察部分(寝室のパ・ド・ドゥ)のインタビューは興味深いもの。誰も心で感じている、損得感情、性的欲求、裏切り、悲しみを見事に言葉にして頂いています。またpddの意味など、ダンサーの奥深さを改めて感じ入る映像です。そこでロホ、アコスタのマノンはとても情熱に溢れたものになるのでは・・・と期待していましたが、以外や以外、アコスタの控え目感がマイナスの印象でした。どちらかと言うと人間的な暗い、陰湿な部分とデ・グリューが落ちていく様をこの2人は魅せてくれると期待していましたが、上品というより、おとなしい感覚を覚えます。レスコーを演じるホセ・マルタンと、看守のトマス・ホワイトヘッドは主役2人と比較して絶品でした。レスコーは「こんな人間には近付きたくない・・」的な雰囲気を漂わせているし、ホワイトヘッドの看守は変態度200%でマノンに迫ります。 ところがマノンは相変わらず少女みたいに逃げ回っているし、これじゃ・・しょうがないと思ってしまいます。でももしマクミランの意図がここにあるのであれば、やっぱりしょうがない・・ですね。
 私的には、マノンとマルグリットの一番の違いがここに集約していると感じています。マノンはデ・グリューに50%心身を捧げ、マルグリットはアルマンに100%の愛を誓います。(ちょっと極端に言ってみました)どちらが幸せ?って質問には、マルグリットです・・っと私は答えます。 っで話に戻ると看守がマノンに迫っている間は、うまく切り抜ける位のしたたかさ(”したたか”は漢字で書くと”強か”となる)をもって欲しい気がします。当然看守はデ・グリューが居るので必要以上にマノンを欲したと思うし、またジェニファー・ペニー/アンソニー・ダウエルは見事に、ここに記した感情伝わる(個人の感情なので違うという人も多いと思いますが・・)気がします。ジェニファー演ずるマノンは宝石のブレスを捲かれる時には、違いこそあれムッシューG.M.を含む過去を思い出した筈。とにかくうまく切り抜けるために。ジェニファーはその諦めをしたたかさとして見事に表現しています。・・と書きつつもこのペアの「沼地のパドドゥ」では感動してしまいました。このテンションがあれば面白いマノンになっていた感じがします。
原作を未だ読みきっていない私にとって”これ”と言う筋が立っていない状態ですが、生まれ持った物は変わらない事が、この物語を素敵にする気がします。

一転パリオペラ座の「椿姫」はハンブルグバレエの「椿姫」とは似て非なるものでした。アニエスのマルグリットはイメージにニアリーイコール。全体を通しても素晴らしい舞台です。どちらが好き?って質問されると、もちろんどちらも好きです。 この演目、とにかくアニエス・ルテステュの演技と巧さにすっかりまいりました。残念なのはステファンとアニエスの大きさかもしれません。いつもリフトの時「ヨイショ」と言う声が聞こえてきそうな位に、1テンポ遅れます。(これ、すごく気になりました)紫はどうにか持ち堪えていたのですが、白・黒はきつかったようです。

黒のパ・ド・ドゥでのアニエスの気持ちが本当に傷ましく、悲しく、またアルマンの強引な気持ち(裏切りの代償)に対し、全く引けをとらない位の”愛・優しさ”を表現しています。すごいと思いました。アニエス・ルテステュというダンサーに大変興味を持ちます。(pddではアレクサンドル・リアブコとジョエル・ブーローニュの完璧さにはかなわないのでしょう)舞台では決して観られない、カメラワークが捉えた表情。これが結果的に良いのか悪いのかわかりませんが、これだけ通常舞台でダンサーのPINアップが多いと、ダンサー自身もきついかもしれません。白鳥の湖の時も感じました。Opusではよくあるパターンかもしれませんね。でもそんなステファンでしたが、アニエスとの黒は感動しました。

カール・パケットのガストン、プリュダンスのドロテも、これまた美しい。プリュダンスの狡さを効果的に入れてはいるものの、ドロテの美しさの前には、とても”いい人”に見えてしまいます。(少しずれますね。ドロテが大好きな私でした)そもそも「プリュダンス」はもう娼婦を上がって、残ったお金を資本に商売でもしながら、現娼婦のアドバイザーとして暮らしている慎重で狡猾な女性です。ガストンはプリュダンスとの関係から、この物語ではほぼ中央にいますが、決して美しすぎてはいけません。・・がパリオペラ座のキャスティングは、それさえも超越した物語を造っていました。(狡猾さ=可愛い と見えてしまいます)デ・グリュ、マノンはミスキャストと感じます。やっぱりホセ・マルティネスは王子でした。マルグリットの対極にあるこの役にはマノンであるデルフィーヌ・ムッサンの最後の透明感と最初の原色感が必要で、それをデ・グリューと盛り上げる必要性が存在しますが、ホセは最初からノーブルかつ透明感があり、また美しく、卑しさを全く感じません。マノンを入れる必要性は意見がいろいろあるかと思いますが、第3者に語らせる手法は効果的です。・・がもしそれぞれ、マルグリットが長い物語を語ると、また世情を説明すると、とても2時間で終わる代物では無くなることは確かでしょう。「マノンをマルグリットに贈る。 慎み深くあれ」と言う記述が、原作にあります。これは書物をアルマンが贈る時にタイトルページに書いた言葉。いやいや貴方が慎み深く有って欲しかったと突っ込みたくなる程、同時進行するマノンは効果的ではないでしょうか ・・ と思います。マルグリットは高みに行ったよ♪ さてあなたは・・という表情をステファンは後悔と悲しみを以って、日記を両手に抱えて終了しました。とっても素敵な映像でした。
DVDは予約発売で注文したい♪
それと記載しておきたいのが、ピアノ : エマニュエル・ストロッセル、 フレデリック・ヴァイセ・クニッテルです。見事です。私は良くDVDから演奏部分を取り出して聴いているのですが、オペラ座はいつも楽曲をゆっくり鳴らします。今回もそう♪ でも見事なピアノ演奏。指揮:ミヒャエル・シュミッツドルフはもしかして初めて聞いた名前ですが、覚えておきたい名前になりました。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿